SDGs経営塾 第1回 SDGs成長経営への新しいメガネ
私たちビジネスパーソンは、2020年からのコロナ禍を通して、時代の変化の大きな境目を体感中です。その「大きな変化の”大元”がいったい何か」に気づくことで、新しい未来と新しい経営風景が見えてくることでしょう。
特に、SDGs経営には “将来のありたい姿”を明確に持つことが求められます。
明確な”将来のありたい姿”がある経営とそれに迷いのある経営では、次の一手のスピードが違ってきますね。
激動のいま、皆さんは“将来のありたい姿”の明確なイメージを持たれていますか?
本SDGs経営塾では、多くの経営者の方々に“SDGs成長経営”の指針を私の実体験を絡めながら『しる→わかる→かわる』の流れでお伝えしていきます。想像力・創造力の喚起に少しでもお役に立てれば幸いです。
SDGsって何だろう?
“生命の問題”、そして“本気の醸成”へ
さて、ここからは私の大切な友人の経営者と対話するように、SDGs成長経営への道筋を「ホップ(しる)・ステップ(わかる)・ジャンプ(かわる)」の3段階でお伝えしようと思います。通常のSDGs成長経営でご支援しているエッセンスです。
まず、「ホップ(しる)」のステージでは、友人が自分ゴトになってもらうために、下記の前提について、様々な事例や図解を使って深い対話をします。ここがとっても重要なところなので、その対話にはいっぱい時間をかけます。
・SDGsの本質は、このままでは続かない地球世界を続けられるようにすること。
・それは、環境問題の先にある私たちの“生命の問題”であること。
・SDGsの17目標は、“生命の問題”が基点となって、すべてがつながっていること。
次の「ステップ(わかる)」のステージでは、対話を通じ友人が社会の何に関心があるのか、何を問題と思っているのか、これまでどのような感動やもどかしさを体験してきたのかを傾聴します。
例えば、ある製造業C社やベンチャー企業J社の経営者は、これまでの喜び、怒り、切なさ、苦しみといった、あらゆる実体験とSDGsの目標をつなげることが、“成長経営の発火点”になりました。
最後に、「ジャンプ(かわる)」のステージに入るため、友人にはこう伝えます。
「SDGsへのアプローチは、例えれば、情熱的な恋愛(仕事)と少し似ていると思うんだ。
相手(対象)に夢中になり、なんとか素敵なゴールになるように、懸命に努力したり行動したりして難局を乗り超えようとするよね。
情熱と本気で、“本業(自分)とSDGs(相手・対象)”を新しく結合させて、隆々とした“将来のありたい姿”を共につくりだしていこう」
大事なことは、外圧からの“やる気”という力ではなく、本人の内部から湧き出る“本気”の醸成と持続です。
市場や社員、就職希望者は、経営者の“本気”の有無をいとも簡単に見抜く時代を私たちは生きています。
本コラムを通して、SDGsの本質を知り、本気のモードになって、次の時代の本流をイノベーションする“SDGsリーダー経営者”がどんどん輩出すると嬉しいですね。
第2図 SDGsは、“生命の問題”が基点
Stockholm Resilience Centre(sdgs-food-azote.jpg (3600×2347) (stockholmresilience.org))より一部改変
次回のトピック
→ 友人の経営者が、本気モードになってもらうことがポイントです。
・地球は、人の体温に例えると何度なのかを想像してみましょう
・“経済・社会・環境”の関係変化を時系列でイメージしてみましょう
・“生命の問題”を新しい経営をスタートするチャンスとして考えてみましょう
執筆者
橋本元司(はしもと・もとじ)
新価値創造研究所代表。SDGs成長経営コンサルパートナー・2030SDGs公認ファシリテーター
パイオニア株式会社で、商品設計や開発企画、事業企画などを経験後、社長直轄の「ヒット商品緊急開発プロジェクト」のリーダーとして、ヒット商品を連続でリリース(サントリー社とのピュアモルトスピーカー等)。独立後、「新価値創造」を使命として、事業再生、事業開発、人財開発、経営品質改革を行い多種多様な企業を支援している。
最初に、「SDGsの基礎」を迅速に知りたい方は、国連WFPが作成した動画(学生向けバージョン)をご覧いただくことをお薦めします。
国連WFP「SDGsって何だろう?(学生向けバージョン)」(7分35秒)
上記動画のメッセージの一部を以下抜粋します。
「持続可能な開発目標というテーマはこれまでもさまざまな国際会議で話し合われてきました。しかし、これまでのモノと違うのは、SDGs(持続可能な開発目標)が国やNGOばかりではなく、企業をパートナーとしたことです。
すべての人と企業が積極的にSDGsに取り組めば、私たちはこの地球でこれからも豊かに暮らしていくことができます。(1分16秒~1分48秒)」
上記の重要なポイントは、これから持続可能な開発目標(SDGs)を達成する中心の担い手が「企業」であることです。それは次回以降に詳述しますが、「SDGsは、今後、全ての企業の存続と成長に直面・直結する」ことを意味しています。
しかし、2015年9月に開催された「国連持続可能な開発サミット」で採択されたSDGs成果文書「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」の中には、SDGsの17目標を実現するための方法や手順は記載されていません。
多くの経営者が、SDGsをどう取り入れたらいいのか悩まれている理由の一つがここにあります。