事業承継にかかるコストは?
知っておきたい税制度と対策ポイントをご紹介!
日本では、現在「超高齢社会」を迎え*、日本を支える中小企業も「経営者の高齢化」といった影響を受けています。特に事業承継の分野では社会問題となっており、実際に承継をするうえでさまざまな課題があります。そこで本記事では、事業承継の種類や課題とコスト、また事業承継で失敗しないためのポイントをご紹介します。
*令和2年10月1日現在の65歳以上の人口=28.8% [令和3年度版高齢社会白書(全体版):内閣府]
事業承継とは?主な3つの種類
事業承継における課題とコスト
親族内承継、従業員等への承継、第三者承継には、それぞれ以下のような課題やコストがあります。
親族内承継の課題とコスト
親族内承継では、想定外の課題やコストが生じるケースが少なくありません。
代表的なものは、相続や贈与に関する課題・コストです。
親族内承継として、相続や贈与による株式や資産を承継させる場合、相続税評価額にもよりますが、他の相続人と争いになる可能性も少なくありません。会社関係の資産を承継しなかった他の兄弟姉妹など関係者の利害が複雑に絡むためです。
なお、相続において争いとなると、各種特例による税額軽減などの恩恵が受けられず、想定外のコストが発生する可能性があります。資産承継上の不公平感を生まないために、慎重に対応する必要があります。
そのほか、株式を後継者へと移転する場合には相続税や贈与税がかかりますが、事業承継直後には資金不足の状態にあることが多いため、資金調達についても留意する必要があります。
従業員等への承継の課題とコスト
従業員等へ承継する場合、親族承継以上に後継者候補が会社経営に関して強い責任感を持っていることが重要です。加えて、後継者の家族や従業員など、関係者に理解してもらう必要もあり、時間を要するケースがあります。
また従業員等への承継では、後継者に自社株を有償で譲渡する場合が多く、その際には買取資金を用意する必要があります。さらに、後継者となる従業員は企業の債務・保証・担保といった財産も承継することになるため、引き継ぐ際には現経営者と後継者との間で対話を重ね、お互いの認識に齟齬が生じないようにすることが大切です。
なお、引き継ぐ株式の購入資金は、金融機関から借り入れたり役員報酬をアップしたりすることで調達することが一般的です。
第三者承継の課題とコスト
第三者承継では、自社に適した事業承継先を見つけるためのパートナー選定や、契約、事業評価など多くの段階を踏む必要があるため、親族内、従業員事業承継に比べて手間や時間がかかる点が課題です。
また、事業の全部譲渡や一部譲渡、合併、会社分割などの多くの手法があり、最も適切なものを検討する手間や時間もかかります。さらにM&Aでは、企業評価や情報管理(情報漏洩対策)を適切に行う必要があります。特に情報管理に関しては、手続きの途中で情報が漏洩すると交渉が破談する可能性もあるため、注意が必要です。
コストとしては、譲渡対価(売却益)への課税やM&A業者へのアドバイザリーフィー(成功報酬)などが発生します。
このように、事業承継にはさまざまな課題やコストが発生しますが、多くの企業にとって検討の必要性が高まっています。経営者の高齢化に加え、コロナ禍により多くの中小企業が厳しい経営を強いられているためです。
実際に、前述した第三者承継の1つであるM&Aの件数は2020年にかけて増加しており、注目を集めています。
そこで次章では、事業承継を行ううえでの課題やコストへの対策ポイントをご紹介します。
失敗しない事業承継対策ポイント
事業承継で失敗しないための主な対策として、以下の3つをご紹介します。
持株会社の活用
1つ目は持株会社の活用です。
後継者が、資産管理を行う特別の目的を持った会社を設立し、先代経営者の事業会社の株式を取得することにより、事業会社の持株会社となる方法です。
これにより、先代経営者の相続を行う際には、事業会社の株式の代わりに譲渡代金が残ることになります。事業会社の株式は後継者に承継されるため、株式の分散を防ぐことができます。
ただし、先代経営者には株式を売却したことによる譲渡所得の課税、後継者や持株会社には事業会社の株式購入時の諸費用など、資金面については注意が必要です。
なお、持株会社は大企業でよく見られる形態ですが、中小企業でも設立可能です。
事業承継税制による負担軽減・納税猶予
2つ目は事業承継税制です。
事業承継税制(法人版)は、自社株式の贈与や相続にかかる納税負担を緩和するために設けられ、2018年税制改正で時限的ではありますがより使いやすく整備されています。
事業承継税制を活用することにより、後継者が取得した自社株式にかかる相続税・贈与税について、納税猶予を受けることができます。また、一定の要件により相続税・贈与税の免除が可能です。
さらに、法人版事業承継税制では、後継者が親族であることが要件になっていません。代表権や議決権など一定の要件により、相続・贈与する株式すべてに対して100%の税額免除ができます*。
ただし、雇用確保条件や各種報告義務などの要件を満たす必要があるため、実際に適用する場合には十分な注意が必要です。
*特例制度の場合
2024.3.31までに提出した特例承継計画を提出し、認定を受け、2027.12.31までの相続・贈与(遺贈含む)に限る。
事業承継税制について、要件や手続きなどの詳細については以下をご確認ください。
出典:国税庁
金融機関の支援を活用
3つ目の対策として金融支援の活用をご紹介します。
事業承継における金融機関は重要なステークホルダーとなり得ます。
金融機関は、多くの中小企業の皆さまと共に歩んでいるため、良き相談相手になるのではないでしょうか。
経営状況や資産承継についてもぜひ相談してみてください。
適切な資金の借り入れや各種情報提供、事業承継の段階に応じたM&Aマッチング支援を行ってくれる金融機関やそのグループ会社も少なくありません。
事業承継を進める際に知っておきたい準備と進め方については以下の記事もご覧ください。
このように、事業承継を成功させるには、税制や支援制度をもれなく把握し、最適な支援を受けられる体制を整える必要があります。しかし、こうした最善の事業承継を自社のみで行うのは簡単ではありません。
そこで、以下のように事業承継の支援を行っている会社を活用することが重要です。
きらぼしコンサルティングの「事業承継支援」
きらぼしコンサルティングの事業承継コンサルティングでは、次世代へ事業を承継する際の経営上の課題を明確にし、経営権・事業・財産、3つのバランスを考えた最善な承継策の実行を支援します。
きらぼしコンサルティングには以下4つの特徴があります。
・中小企業と共に歩んできたコンサルタント
中小企業の課題に取り組んできた地域密着型のコンサルタントが経営状況を理解し、潜在的な課題にも取り組みます。
・経営者の想いを重視した承継計画の策定
経営者の想いに寄り添い、中長期的な視野のもと、承継計画を二人三脚で策定します。
・グループ金融機関を活用した資金調達
相続・贈与・売買といった承継に必要な納税資金をはじめ、承継後の安定した経営のために必要な資金を確保するため、グループ金融機関の協力体制を備えています。
・グループ会社の活用
不動産の活用や遺言など専門家の協力が必要な課題についても、グループネットワークを活用し、窓口として対応可能です。
きらぼしコンサルティングの事業承継コンサルティングについては、以下のページで詳しく解説しています。ぜひご覧ください。
事業承継とは、会社の経営権などを後継者に譲り渡すことです。中小企業では、オーナーの個人的手腕や人脈、取引先との信頼関係などが経営基盤となっている場合が多く、後継者(誰に引き継ぐか)を慎重に考えなければなりません。
中小企業庁の発表した2021年版「中小企業白書」によると、経営者年齢のピークは2000年には50代前半でしたが、2020年には70代前半となっており、この20年で大きく上昇しました。多くの中小企業で経営者の高齢化が進んでいることがわかります。
また、2020年の後継者不在率は、60代経営者で48.2%、70代経営者で38.6%、80代経営者でも31.8%です。このデータからわかるように、後継者の不在は深刻な問題となっており、中小企業が廃業する大きな要因のひとつとなっています。
後継者の不在を理由に廃業すれば、雇用の喪失や、貴重な知的資産が失われることとなり、日本経済にとって大きな痛手となります。このように事業承継における後継者不足の問題は、中小企業のみならず日本にとって喫緊の課題となっています。
出典:中小企業庁HP
なお、廃業の理由については以下の記事でも解説していますので、あわせてご覧ください。
自身が年齢を重ねてきたこともあり、そろそろ後継者を探したいと考えている経営者は少なくないでしょう。一方で、企業の中には後継者が見つからず廃業に追い込まれてしまうケースもよく見られます。このような事態を避けるためには、早い段階から事業承継に向けた準備を行うことが大切です。この記事では、事業承継を行う際の具体的な方法について解説します。後継者探しに難航している経営者は、ぜひ参考にしてください。
では、事業承継には具体的にどのような種類があるのでしょうか。事業承継には、主に次の3つに分類できます。
1つ目は、現在の経営者の子など親族に承継させる親族内承継です。
親族内承継は社内外から理解を得やすく、相続等による財産の移転が可能で、所有と経営の一体的な承継が期待できます。
2つ目は親族以外の従業員への承継です。長年一緒に経営に携わってきた従業員や役員などに会社を託すことができます。
3つ目は社外など第三者への承継です。株式譲渡・事業譲渡などのM&A、事業のカーブアウト(部門の分離や子会社化)のほか、会社分割により事業の一部を外部へ承継する方法もあります。
社内や身内に適任者がいない場合でも広く候補者を募集でき、現経営者に会社の売却益が入る点が特徴です。また、2019年の会社法改正により、親会社となる会社が株式交付を行うことでM&Aを実行することも可能になりました。
事業承継には以上のような種類がありますが、非上場企業や中小企業が行う際には課題もあります。事業承継にはどのような課題やコストがあるのか、次章でご紹介します。