社員も会社もWin-Win!
安定雇用をかなえる規定改訂と自己評価型人事制度
津久井湖観光株式会社
(左から)支配人・中里隆秋様、常務取締役・越川光敏様、専務取締役・山本哲朗様、代表取締役・田原憲和様、取締役総務部長・木村浩之様
春には桜、秋には紅葉と、四季折々の表情を見せる津久井湖周辺。湖の造成をきっかけに誘致された「津久井湖ゴルフ倶楽部」は、美しい自然と一体となった3コース、計27ホールを有する人気のゴルフ場です。その運営を担ってきたのが津久井湖観光株式会社。ゴルフ業界の人手不足が囁かれる中、オープン60周年を目前にして、定年年齢の延長や人事評価制度の改定、キャディ社員の賃上げを一気に実行しました。
2021年4月から施行された改正高年齢者雇用安定法(2025年4月改正)も背景に、大幅な人事制度改革に踏み切った取り組みを代表取締役の田原憲和様、取締役総務部長の木村浩之様、支配人の中里隆秋様に語っていただきました。
雇用の確保に向けて人事のプロに依頼
目的意識を持って働ける人事評価制度へ
――その結果、定年年齢の変更だけでなく、人事評価制度全体を再構築されました。
木村取締役 等級が8段階に分かれているのですが、なにができれば上の等級に上がれるのか、各等級の要件を再定義しました。これまでは等級ごとの在籍年数が決まっていて、どんなにがんばっても少しずつしかキャリアアップできませんでした。これからはやる気のある社員はどんどん上に上がれます。
それから「自己評価」も始めることにしました。これは従業員自らが半期ごとの目標を立て、その達成度を自分で評価するしくみです。直属の管理職も評価して本人にフィードバックし、自己評価との差があればその理由をすり合わせます。「上司に言われたからやる」から「社員自ら目的意識を持って働く」という転換が起こり、能率が大きく向上すると期待しています。
田原社長 マネジメントする側も指導の仕方が変わるのでは。「あなたはこういう目標を立てていたよね」と、社員の目標に沿った改善策を指示できますよね。
直属の管理職による一次評価も最終評価に影響する評価ウェイト設計としたことで上司への忠誠心も培われるはずです。現場を知らない役員が評価を左右するといったリスクも防ぐことができます。部下のモチベーションを引き出すマネジメントは中間管理職が役員を目指すうえでも良い訓練になるでしょう。
変動給より固定給を厚くして安心感を
――処遇を改善するために給与体系にも手を入れました。
中里支配人 とくにキャディ社員の処遇改善は大きなテーマでした。以前はコースに出ると加算される「ラウンド給」と呼ばれる変動給の割合が高く、年間の収入が不安定でした。たとえば社会保険料は4〜6月の最盛期の所得で決まるため、閑散期の1〜2月は手取りがかなり少なくなってしまいます。
そこで給与体系を他の職種と一本化しました。退職金や賞与に計上していた予算の一部を月例給に回し、固定給をアップしました。今後キャディを使わないセルフ化が進んだり、年齢が上がってラウンド数を重ねることが厳しくなったりしても、基本の月収は変わらず、安心して働いてもらえます。コースに出られない日は進行管理をするマスター室やフロントの仕事を兼務するなど、活躍の場も広げる予定です。
田原社長 今までは求人を出しても給与の面で見劣りしていました。社員のモチベーションと能力を引き上げ、採用の面でもプラスになれば大きな前進です。
中里支配人 実際に新しい求人情報を見て、地元出身の青年が入社してくれました。さっそく効果が表れていますよ。
――津久井湖ゴルフ倶楽部は接客が良いとクチコミも上々です。
田原社長 そのようですね。社員のモチベーションが接客に表れているとわかり、うれしくなりました。支援していただいた結果に満足しています。
各セクションの課題に社労士とともに対応
――きらぼしコンサルティングの担当者はいかがでしたか。
田原社長 等級ごとの要件を策定するために全社を巻き込み、各セクションでディスカッションしたのですが、潜在化していた課題が次々に見えてきました。そうした課題にも対応できる草案を提案していただいたり、各部署の多様な意見をとりまとめたり、さらには社労士の先生や他社事例なども紹介していただけたので、スムーズにまとまりました。
中里支配人 ゴルフ場という特殊な環境を理解したうえで親身に対応してくださったので、こちらも包み隠さずに情報を開示できました。お客様が多くてもコースで働く人がいなければゴルフ場は運営できません。人材の確保と組織運営のベースが整ったことは非常に良かったと思いますね。ちょうど今、4月に書いてもらった評価表を使いながら冬の賞与の査定をしているところです。
田原社長 正直、パンドラの箱を開けたような想いです。私自身、人は会社の財産だと再認識しました。
もし改定に踏みきらなかったら10年先、20年先の経営に影響をおよぼしたと思います。しかし自社で人事の専門家を雇うとなると相応の固定費が必要です。採用活動も含めてそれなりの時間も必要だったでしょう。きらぼしコンサルティングにアウトソーシングしたことで1年半で成果物が出てきた。決して高い買物ではなかったと私自身は感じています。
お客様と従業員、どちらの満足度も高められる周年に
――2025年に開場60周年を迎えます。抱負をお聞かせください。
中里支配人 アニバーサリーイヤーとして年間でイベントを企画しています。社員みんなのアイデアを吸い上げて、会社全体で進めていく予定です。できれば地域の方にも喜んでもらえるような施策を進めたいですね。
木村取締役 今回のご支援で、きらぼしコンサルティングと太いパイプができました。今後は相談したいことがあればいつでも気軽に声をかけられるという安心感がありますね。
田原社長 周年にふさわしく、顧客満足度と従業員満足度を両輪で高めていきたいです。記事をお読みになった方も、この機会にぜひお運びください。
担当コンサルタント(手塚・友井)より
今回は「なにをどこまで見直すか」入口の整理をする検討期間を4か月設け、約1年半かけて人事制度全体を再構築しました。結果、既存の退職金制度と賞与の支給ルールを見直すことで月例給与の支給水準を大幅に改善でき、従業員の皆様にも喜んでいただくことができました。今後は新設した「目標設定による評価制度」を通じて、優秀な方はステップアップに弾みがつきます。働く社員様のモチベーション向上に資する人事制度再構築ができたものと自負しております。
津久井湖観光株式会社
――今回のコンサルティングをオーダーされた理由を教えてください。
田原社長 定年年齢を60歳から65歳へ変更するつもりで関連規定の改定に着手しました。今は人材の確保が難しいご時世ですよね。当社を含めゴルフ業界も採用が厳しくなってきました。老齢年金の支給開始年齢が引き上げられたこともあり、社員に安心して長く働いてもらえる環境をつくろうと考えました。
木村取締役 ところが分厚い規定を見たら、定年だけでなく、現状にそぐわない箇所がいくつもありました。今後の求人のためにも改定は必須でしたが、当時は顧問の社労士もおらず、私たちの手には負えないと感じてコンサルティングを依頼しました。