2022年2月号「忙しい起業家向けオンライン・ビジネス・スクール」

シリコンバレーレポート

Delta Pacific Partners 川口 洋二氏がお届けするシリコンバレーレポート。今号は女性起業家二人が手掛ける新スタイルのビジネススクールについてご紹介しています。

 

まったく新しい起業家向けビジネススクール

社会人になって経営学を学びたいとき、まずはビジネス・スクールに通うことが考えられるが、通常修了まで2年ほどかかり、社会人にとっては時間的にもコスト的にも制約が大きい。ましてや既に起業のアイデアがあり、起業に必要なスキルを身につけたいという起業家候補者や、事業が急速に成長している会社の経営者は時間に追われており、加えて財務、営業、マーケティング、人材採用等学ぶべきことが山のようにある。既存のビジネススクールでは対応不可能である。

フレームワークというベンチャーはテック系の新世代の起業家をターゲットにして、業界初のオンデマンドのビジネス・スクールを作ろうとしている。スマホからアクセスでき、起業間もないシードステージからIPOまでをカバーする。ポケットに入っていつでも相談でき、継続的に学び、成長し、スキルを伸ばすことを怠らない、新しいリーダー達の学びの伴奏者となることを目指している。

既存のビジネススクールのように様々な業界出身で目標も異なる生徒を対象にするのでなく、ターゲットを絞ることで実践的なスキルをカスタマイズして提供することができる。一回のレッスンの長さを短くした「マイクロ・ラーニング」で、ちょっとした時間が空いたら利用でき、各自のニーズにあわせてコースを選択できる。

フレームワーク社の強みとは?

フレームワーク社の強みのひとつはソーシャル・ラーニングと、それを支えるグローバルで活躍しているテックベンチャーの起業家リーダー達からなるコミュニティである。

グーグルの元CEOのEric Schmidt、Zoomの共同創業者のEric Yuan、ヤフーの元CEOのMarissa Mayer、SNAPの共同創業者のEvan Spiegal等が名を連ねる。他にもベンチャーで日々の業務に携わっているマネージャークラスのメンターもおり、参加者はこれらのメンターとグループでディスカッションができ、インターラクティブに実践的なことを学ぶことができる。

カリキュラムは世界のトップクラスのテックの企業が使っているツール、戦略、方法論を15分程度のレッスンを複数まとめて構成され、ひとつひとつのレッスンは受講後すぐに学んだことをアクションに移せるように工夫されている。

製品開発の方法、企業の成長戦略、生産性の向上、コミュニケーション、財務等のカテゴリーがあり、各カテゴリーの中には、例えば、プロダクト開発のロードマップの作り方、マネージャーの役割、Amazonから学ぶべきこと、といったコースが用意さている。

フレームワーク社のメンターとのグループディスカッション (同社ウェブより)

トレンド情報収集や繋がりが作れるコミュニティ機能

カリキュラムとは別に、スタートアップ業界の最先端のトレンドに乗り遅れないように、例えば、新しい技術トレンド、コロナ禍の働き方等、定期的に新しい話題が提供される。その中で興味のあるものをピックアップし、コミュニティで意見交換もできる。

参加者同士で1:1で繋がることができる機能も用意されており、仲間との繋がりも強くなり、起業で成功をめざすプロフェッショナルなプライベート・ネットワークを手にすることができる。ネットワーク・インテリジェンスとも呼ばれるように、だれを知っているかで自分のインテリジェンスが決まると言われる時代においては、大切な機能である。

フレームワーク社は2020年にスタートし、まだシードステージのベンチャーである。創業者の二人は女性で、世界中の様々なバッググランドの人がこのアプリで起業にチャレンジできるようになれば、と願っている。現在は新メンバーを受け付けておらず、ウェイトリストで待つことになる。オフィシャルスタートが待ち遠しい。(以上)

フレームワーク社共同創業者のRiya PabariとAsha Haji