このスタートアップは成功する?AIが予測

シリコンバレーレポート

AI搭載、スタートアップの将来予測プラットフォームがローンチ

スタートアップや投資に関する過去のデータを提供していたCrunchbaseが2月にAIを活用してスタートアップの将来の予測を行うサービスの提供を開始した。同社のAI予測ツールは、起業家や投資家にとって重要なサポートツールとなる。

・このスタートアップは成長しているのか?
・買収される可能性はあるのか?
・資金調達のタイミングは近いのか?
・上場の見込みはあるのか?

CrunchbaseのAIは、こうした疑問に対して予測を提供する。資金調達やIPO、M&Aの可能性を分析し、スタートアップの将来を見通すための重要な指標となる。
スタートアップの資金調達のAI予測
図1. スタートアップの資金調達のAI予測(この例では、Krutrim社が2025年第三四半期に59%の確率で資金調達を行うと予測。ソース:Crunchbase Webより)

CrunchbaseのCEOのイェーガー・マコーネル氏は「我々はもう単なるデータ会社ではない。私たちはCrunchbaseをAIによる予測型のインテリジェンス・ソリューションとしてリニューアルした。昨日、今日、その企業に何が起こったかだけでなく、過去のデータを超えて、明日、その企業に何が起こるかを提示する。」と述べている。
同社の過去のデータを使ってのテストでは、資金調達予測は95%の精度と99%の再現性を示した、という。
例えば、最近Coda社がGrammarly社に買収されたが、Crunchbaseが買収の可能性を93%と予測してから、わずか60日以内に実際の買収が成立した。

約18年にわたって収集した多様で膨大なデータ

Crunchbaseはスタートアップや投資家に関する情報を集めたデータベースで、2007年にスタートアップ自身が情報を入力できるクラウド・ソース型のデータベースとしてスタートした。

そこには約18年にわたって集められた何百万もの未上場企業のデータが登録されている。Crunchbaseのデータは、企業名や設立日といった基本情報にとどまらず、資金調達状況や主要メンバー、競合情報など多岐にわたる。インターネット上の公開情報はもちろん、政府提出書類や業界関係者からの直接情報など、様々なルートから多様な情報を収集している。
さらに、何千ものデータパートナーとの連携や、社内エキスパートチームによる情報精査、そして8千万人ものアクティブユーザーが入力するデータも活用し、データの精度を高めている。

例えば、資金調達等の何らかのイベントの前に、スタートアップはCrunchbaseの情報を更新する可能性が高い。こういったシグナルを検知し、収集したデータをAIで分析し、スタートアップエコシステムの動向を予測する。
AI技術を用いることで、人間では困難な複雑な分析が可能となり、より精度の高い予測が期待できる。

データベースには注目度を可視化するヒートマップ機能などの高度な機能が追加され、どの企業が注目を集めているかが一目で把握できる。
また、図表やその他のデータ視覚化機能によって、予測結果が分かりやすく提示されるため具体的なアクションに繋げやすい。
もちろん、利用者の興味関心に合わせて情報は最適化され、必要な情報を効率的に取得できるようになっている。

投資家、起業家、業界関係者をはじめとして、様々な立場の人がCrunchbaseのAI予測を活用できる。投資家は投資判断の材料として、起業家は事業戦略の立案や資金調達の準備として、大企業等は業界のトレンドを把握したり、買収の動きをキャッチしたりするのに利用できる。Crunchbaseは将来的にはAIを活用したベンチャー投資の自動化や、ベンチャーのインデックスの作成も視野に入れていると言う。

AI予測の課題

CrunchbaseのAI予測は、スタートアップの未来を予測する上で強力なツールとなりうるが、いくつか課題も指摘されている。
まず、過去のデータに基づいて予測を行うため、データに偏りがあると予測の精度が低下する可能性がある。共同創業者間の意見の相違、キーとなる社員の退社など、スタートアップの内部でのイベントは外部に出てこない。
さらに、スタートアップの成功は、規制の変化や市場の変化といった予測不可能な要因に左右されやすいため、AIでも予測は難しい。

まとめ

今後、Crunchbase以外でもスタートアップのデータを保有する事業者が同様のサービスを提供することが予測される。多様なデータとAIによる予測は、起業家や新規事業を立ち上げる企業にとって、現在のスタートアップの動向を把握し、ビジネスチャンスを掴む上で重要な指標となる。
AI予測サービスを活用することで、市場のトレンドをいち早く察知し、競合との差別化を図り、成功への道を切り開くことができるだろう。

(以上)

https://about.crunchbase.com/blog/meet-the-new-crunchbase-predictive-company-intelligence/

著者

川口 洋二氏

Delta Pacific Partners CEO。米国ベンチャーキャピタルの共同創業者兼ジェネラル・パートナー、日本と米国のクロスボーダーの事業開発を支援する会社の共同創業兼CEOなど、24年に渡るシリコンバレーでの経歴。NTT入社。スタンフォード大学ビジネススクールMBA。

 
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