「withコロナで動き始めているカンボジア」〈前編〉
海外ビジネスレポート第二回はカンボジア。ASEANで注目されることが多いタイやベトナムに比べ、情報が少ないカンボジアについて「コロナウィルス禍の海外ビジネス」というテーマのもと、カンボジア日本人材開発センター(以下、CJCC)の内藤千愛さんにお聞きしました。
カンボジアのコロナウィルス
コロナウィルス禍の変化
一度目のカンボジア駐在から、私にとって約3年ぶりのカンボジア生活ですが、コロナ禍で、生活・ビジネス環境のデジタル化が大幅に進んだことを実感しています。
駐在して数か月経ちますが、現金を使う場面はほとんどありません。カナダ資本の銀行「ABA(Advanced Bank of Asia Ltd)」のモバイル決済が、屋台やトゥクトゥク
(三輪タクシー)など生活場面のあらゆる支払いに使えます。個人間の支払いでも使え日本以上にデジタル決済が進んでいます。
その他、ウーバーイーツの現地版であるフードデリバリーの「NHAM24(ニャム24)」も多く利用され、トゥクトゥクもアプリで呼ぶことができます。
〈街角の売店でも ABA のデジタル決済が可能〉
カンボジアの魅力
カンボジアに対して、内戦というネガティブなイメージを抱く方もいるかもしれませんが、現在は内戦を経験していない若い世代を中心に「タイやベトナム経済に追いつけ!!」と前向きにビジネスに取組んでいます。
カンボジアは若年層が多く、人口分布は概ね美しいピラミッド型で、当面の間は労働人口が増えていくことが大きな魅力のひとつです。以前と比較してインフラも改善され、隣国のタイやベトナムへのアクセスも良く、朝、首都プノンペンをバスで出発すれば昼頃にはベトナムのホーチミンへ到着します。
カンボジアにおける日本と中国
カンボジアの首都プノンペンで、一番目につく日本ブランドは「イオン」かもしれません。日本と同じイオンモールもありますし、市民の足であるバイクを買う時のローンもイオングループが手掛けています。
一方、中国の影響も強まっています。不動産やインフラ事業等をはじめ、中国の投資が次々と参入してきています。
〈建設中のマンションが並ぶ首都プノンペン〉
就職も日本企業ではなく中国企業を希望する人が増えていますし、私たちCJCCが教えている日本語学習者も減少傾向で、今後のカンボジアにおける日本の位置づけを憂慮しています。
日本とカンボジア間の交流・協力関係を促進していく役割を担っているCJCCとしては、引き続き、日本語人材や産業人材育成をはじめ、日本とカンボジアの企業、人材を繋ぐプラットフォームとして日本のプレゼンス向上に貢献していきたいと考えています。【後編に続く】
(発言は個人の見解であり所属先の見解ではありません。)
【インタビュアー = きらぼしコンサルティング 蓑田 光】
インタビュー時期:2022年7月
私は2022年4月から自身2度目のカンボジア駐在中です。カンボジアはその頃すでに、入国の際にワクチン接種証明を提出するだけで、隔離期間もなく、仕事をスタートすることが出来るほど、海外から受入体制が整備されていました。
政府公表では5~6月の新規感染者数はほぼゼロ、6月末ごろから発症者が出始めたものの、街中でマスクを着用している人は半数程度です(6月時点)。
これはカンボジア政府の迅速なコロナウィルス対策による結果で、ワクチン接種の取り組みも早く、CJCCがある王立プノンペン大学ではすでに5回目の接種が始まっています。
カンボジアはアンコールワットを代表する観光立国であり、ウィズコロナの環境を早々に整えなければ、多くの観光客を呼び込めないことも背景にあるかもしれません。とはいえ、7月に入ってからはBA.5の流行とともに感染者数が増えており、他国同様、予断を許さない状況です。