ジョブ型人事制度への切り替えで気を付けたいポイント 3 選

組織設計・人事評価制度

この記事では、最近になって注目を集めているジョブ型人事制度について、注目されている理由と、切り替えにあたっての注意点について解説します。また、制度導入にあたっての具体的なポイントや組織設計・人事評価制度構築支援サービスなどについても紹介します。

なぜ、ジョブ型人事制度が注目されているのか

ここでは、そもそもジョブ型人事制度とはどういった制度なのか、さらにはなぜ注目を集めているのか、その概要と理由について解説します。また、導入に伴うメリットについても解説します。

ジョブ型人事制度とは

 ジョブ型雇用メンバーシップ型雇用
業務内容専門性があり、
業務範囲は限定的
明確な業務内容や業務範囲が明確に
定められていない
給与体系業務の成果に準して決定役職や勤続年数で決まることが多い
教育従業員の自主的なスキルアップ社内教育が必要
人材の流動性高い(転職・解雇あり)低い(長期的な勤続が多い)


ジョブ型人事制度とは、従業員に対してあらかじめ職務内容を明確に定義したうえで、労働時間ではなく成果によって評価する雇用制度のことです。日本では馴染みがないかもしれませんが、欧米諸国では広く普及しています。ジョブ型雇用との対比で用いられるのが、日本で一般的となっている「メンバーシップ型」です。こちらは、職務内容や勤務地を限定せず、スキルよりも会社に合う人材を雇用する人事制度となっています。

ジョブ型人事制度が注目される理由

日本では馴染みのないジョブ型人事制度が注目される背景には、「コロナ禍の影響による人事評価制度の見直し」「メンバーシップ型採用の負荷増」「法令順守の観点」の 3 つが挙げられます。
以下でそれぞれの背景について簡単に解説します。

コロナ禍の影響による人事評価制度の見直し
新型コロナウイルスの影響により、リモートワークやテレワークが急増しており、これまでのような業務態度による評価が難しくなっています。ジョブ型人事制度は、成果によって評価できるため、在宅勤務との相性も良く多くの企業の注目が集まっています。

メンバーシップ型採用の負荷増
これまで多くの日本企業で採用されていたメンバーシップ型人事制度のもとでは、年功序列や終身雇用が基本となっていましたが、不況の長期化、労働人口の高齢化といった問題により、企業側のコスト面での負担が大きくなりました。そのため、新たな人事制度としてジョブ型人事制度に興味を持つ企業も増加していると考えられます。

法令順守の観点
働き方改革関連法案が成立したことで、企業は同一労働同一賃金で従業員を雇わなければならなくなりました。

従来のメンバーシップ型の人事制度の多くは、労働内容・仕事内容によって給与が決まるのではなく、勤続年数によって給与が払われており、同一労働同一賃金のルールに適していないため、法令遵守の観点からジョブ型人事制度への切り替えを検討している企業も少なくありません。

ジョブ型人事制度を導入するメリット

ジョブ型人事制度には、さまざまなメリットが存在します。具体的なメリットは以下の通りです。

メリット 1 : 専門性の高い人材の確保
ジョブ型人事制度にすることで、業務が明確化されるため、特定の業務を強みとしている専門性の高い人材が採用できる可能性があります。各従業員の特徴がはっきりとしているため、能力に応じた適切な人材配置も可能となります。

メリット 2 : 業務効率化や人件費の削減
ジョブ型人事制度により、「誰がどの業務を行うのか」といった範囲が明確になることで、業務における無駄がなくなります。そのため、結果的に業務効率化にもつながり、ひいては残業代や人件費の削減などにもつながる可能性があります。

メリット 3 : 勤続年数・年齢に縛られない給与設定ができる(年功序列の廃止)
ジョブ型人事制度であれば、業務単位で給与設定ができるため、優秀な人材であれば年齢に関係なく給与がアップする可能性もあります。年功序列の影響で、優秀であるにも関わらず給与が低く、不満がたまるといった心配もありません。

ここまで紹介したような背景やメリットから、「メンバーシップ型」から「ジョブ型」への切り替えを実施する企業は今後増加すると考えられます。

ジョブ型人事制度への切り替えで注意すべきポイント 3 点

ここでは、ジョブ型人事制度の導入を検討している企業の担当者に向けて、切り替え時の注意点を解説します。注意すべきポイントは大きく分けて以下の3点です。

注意点 1 : ポジションごとに採用基準の明文化が必要

ジョブ型人事制度は、業務内容を明確にしたうえで働くことになるため、採用にあたっては、業務内容を詳しく記載するなど、採用基準を明確にする必要があります。もし業務内容の定義が曖昧なまま契約を結んでしまうと、採用後にミスマッチが起こる可能性もあるため注意する必要があります。また、これまでメンバーシップ型の人事制度を運用してきた企業が、基準づくりにあたって業務の切り分けに不安がある場合、自社だけでなくアドバイザーなどの第三者に意見を求めることで不安を解消できます。

注意点 2 : 契約外の職務には再契約が必要

ジョブ型人事制度では基本的に業務内容を変えられません。そのため、「ちょっと契約にはないけどこれもやっておいて」といったことはできないため注意する必要があります。もし従業員に契約内容以外の業務を行ってもらいたい場合、再契約を結ぶ必要があります。

しかし、契約の結び直しは簡単にできるものではないため、採用活動を行う際はあらかじめ社内の業務内容の棚卸を行ったうえで業務範囲を明確にしなければなりません。

注意点 3 : 組織として一体感を出すことで離職を防ぐ

ジョブ型人事制度では、人材の流出が増え離職率がアップする可能性があります。これは、優秀な人材が自分にあったポジションを探して転職するためです。人材流出を防ぎたい場合、企業に対する従業員のエンゲージメントを高めるような施策の実施、福利厚生を充実させるなど、対策が重要となります。

このように、ジョブ人事制度へ移行する場合、業務内容を明確にし、従業員の企業に対するエンゲージメントが高まるような対策を立てておかなければ、失敗に終わってしまう可能性があるため、注意が必要です。

 

ジョブ型人事制度の導入のために必要なこととは

ジョブ型人事制度の導入のためには、労務に対して適切な評価制度を検討し明文化する必要があります。そのほかにも、職務記述書(ジョブ・ディスクリプション)の発行、業務内容の棚卸、エンゲージメント向上による離職防止対策など、検討すべき事項が数多く存在します。

このような事項を社内のリソースのみで検討すると、時間や労力が多くかかるため、専門的知識を有する外部パートナーと連携しながら検討することをおすすめします
パートナー選定にあたっては、人事領域はもちろんのこと、会社目線・経営者目線で包括的に検討できるかどうか、制度導入後の運用・改善を含めた長期的なビジョンを持っているかどうかが重要です。

きらぼしコンサルティングの「組織設計・人事評価制度構築支援」では、銀行系企業として一過性の付き合いではなく、じっくりと末永くお付き合いをさせていただきつつ、貴社の事情に沿ったプロセス重視の制度設計を実施いたします。

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