経営課題への処方箋 Vol.2「経営の地図」の可視化、共有化
連載第1回では、リーダーが「目的」をきちんと伝えることの重要性、そして、それは【経営の地図】の可視化、共有化であることをお伝えしました。
今回は、組織(チーム)における【経営の地図】の可視化、共有化の方法についてお伝えします。
【経営の地図】を可視化する戦略ストーリー可視化シート
戦略ストーリーの落とし込み方
このシートでは、下部に「経営目的」「経営目標」、上部に“経営目的を実現した結果”を示す「顧客価値・社会価値」を置き、その間に「経営手段(戦略)」を描くようになっています。言い換えると、「経営目的」とそれを実現し続けることでなり得る会社の将来の姿=「経営目標」をストーリーの起承転結の<起>として、「経営手段(戦略)」によって<承・転>、「顧客価値・社会価値」を提供することを<結>とする配置になっています。
よって、基本的には下から上にストーリーが流れる配置になっていますが、シートの左側にある丸数字①~⑩の順に落とし込んでいくことで、ストーリーを捉えやすくしています。
実際には、各パートを可視化した上で、全体俯瞰をしてストーリーを練り上げる形になります。ストーリーを練り上げる上の判断軸としては、「経営目的」と「顧客価値・社会価値(経営目的が実現した内容)」が肝になります。
戦略は手段ですので、目的を軸として、「これならうまくいきそう」といったワクワクする展開になっているかを試行錯誤し、各パートのつながりを深く、濃くしていきます。
【経営の地図】共有化の3つのポイント
可視化ができたら、いよいよ次は共有化です。
【経営の地図】共有化のポイントとしては以下の3点になります。
1、言葉の定義や解釈をセットで伝える
「経営目的」は前回の連載でお伝えした通り、現場のすべての目的のベースになるため、すべての人が“理解・共感・腹落ち”できるかどうかが【経営の地図】浸透の肝となります。
特に、「経営目的」の内容は抽象度が高くなりますので、言葉の定義や解釈も併せて共有することが大切です。
2、5W1Hを明確に伝える
共有化の流れとしては、自社が将来に亘って「誰の・何のために」存在するのかを明らかにしつつ、経営目的を踏まえた「将来の一定時点のありたい姿」を伝え、会社のゴール「何を・どこまで」を明確にします。そして、経営目的を実現しつつ経営目標を達成するための戦略、「具体的にどのようにして」を伝えます。
3、業務~価値提供の流れを伝える
特に、機能分化が進んでいる組織においては、自分たちの業務がお客様やエンドユーザーを含むその先の社会への価値提供にどのようにつながっているのかをイメージできていないメンバーも多数います。そこで、自分たちの製品・商品・サービスがどのような価値を提供しているのか?また、自社の業務の流れにどのような経営資源を投入して価値提供を実現しているのか?を伝えることで、メンバーみんなに業務の意義を認識してもらいやすくなります。
以上が組織(チーム)における「経営の地図」の可視化、共有化の具体的な方法となります。
次回のトピック
次回は、企業経営における今日的課題の1つ目である「トップマネジメント層の育成」について、「経営の地図」の可視化、共有化をすることで期待できる効果をお伝えします。
執筆者
國谷 真(くにたに まこと)中小企業診断士
アート・オブ・ロジック株式会社 代表取締役
『経営コンセプト』“Story for Success”
『社名の由来』<ロジック>:経営の「原理原則」と「論理」を踏まえ、<アート> :「戦略ストーリー」の「可視化・共有化・実現化」を支援します
ではまず、【経営の地図】の全体像を見ていただきたいと思います。
このシートは、経営の現在地から将来のありたい姿の道程(戦略)をストーリー化することから、「戦略ストーリー可視化シート」と呼んでいます。