フィリピンの税制改革(CREATE法)発布
フィリピンで、税制改革第2弾であるCREATE法案(法人のための復興と税制優遇の見直し)は、本年2月に上院・下院で可決、フィリピン大統領は一部拒否権を発動したものの、それに伴う修正法案に対し、3月26日附けで署名され、同法案は、官報掲載後の4月11日に発布されました。
但し、実施細則公表は5月第3週までに固まる予定ですが、以下概要を簡単にまとめます。(2021.5.11現在)
法案の特徴
法人税関係
法人税
現行:30%
新法:一般:25%(2020年7月1日から遡及適用)
課税所得が500万ペソ以下で、総資産(除土地)1億ペソ以下の内国法人:20%
居住外国法人は:25%
(フィリピン源泉の課税所得に対し)
不当留保金課税(IAET)
現行:法人の利益剰余金が資本金を超過する場合、その超過部分に対し10%課税
新法:廃止
最低法人課税(*1)(2020年7月1日から2023年6月30日にかけ)
現行:2%
新法:内国法人・居住外国法人とも1%
付加価値税(VAT)
VATが免除となる取引に付き追加・修正が行なわれた。 ・新型コロナ対策医療用品:販売・輸入に関し、2021年1月1日から2023年末まで免税取引。 ・事業用でない不動産の取引の際のVAT免除となる金額の引き上げ。 (土地については250万ペソ、住宅については420万ペソ)
優遇税制(輸出企業)
戦略的投資優先計画(SIPP)に該当する新規事業に対して以下の優遇が与えられる。(*2) ・法人所得税免税(ITH):4年から7年の間(新規事業により異る) ・ITH終了後、以下の①か②を選択: ①10年間、粗利(GIE)の5%(*3) ②10年間、控除利用の一般税率
優遇措置適用の登録企業
・法人税免除(ITH)のみが付与されている企業: 一定の移行期間を経て、従来の優遇終了。 法人税免除(ITH)終了後、その後もCREATE法の要件を満たせば、優遇措置享受の可能性あり。 ・現行ITH付与されITH後に総所得の5%のインセンティブが与えられている企業: 総所得の5%のインセンティブを10年間享受。 ・現行総所得の5%適用企業: 引続き10年享受。
その他
PEZA等輸出企業などに適用の以下諸点はどの様になるのか現在明らかではない。 ・輸入関税の免除(部品や原材料等) ・ゼロレート付加価値税(VAT) ・PEZAワンストップサービス、等 注 (*1)最低法人課税(MCIT):正味課税所得x税率で計算される税額よりも売上総利益x税率で計算される税額が大きい場合、この最低法人課税が適用されます。外形標準課税的なもの。 (*2)戦略的投資計画(SIPP):今までの例ですと、例えば、インフラ、エネルギー、代替エネルギー、航空宇宙、最先端工学、環境、ヘルスケア、農業、等となっています。 (*3)当初の法案では、PEZA登録企業は、同法のの移行期間から10年経過後再登録により優遇措置の更なる延長が書かれていたが、大統領の拒否権により、10年間のみの適用となりました。 筆/きらぼしコンサルティング プリンシパル 遠藤 容正、CFE 当資料は情報提供のみを目的としており、必ずしも内容の正確性・完全性を保証するものではありません。
当該法案は、正式名称は Act Reforming the Corporate Income Tax&Incentives System (Republic Act No.11534) (別称:Corporate Recovery&Tax Incentives for Enterprises Act – CREATE) で、企業復興税優遇法案と訳され、主に今回の長期にわたる新型コロナ禍の影響で打撃を受けた経済及び企業の体力回復を大きな柱としており、そのための法人税の減税が中心となっています。