市場環境の変化からみる TOKYO PRO Market に今後期待される 4 つの役割とは
この記事では、近年注目が集まる「 TOKYO PRO Market 」に関して、その概要や他のマーケットとの違い、さらには注目が集まる理由などについて解説します。また、市場環境を踏まえたうえで TOKYO PRO Market をどのように活用するのかといった点も取り上げているため、参考にしてみてください。
TOKYO PRO Marketの現状
TOKYO PRO Marketとは
TOKYO PRO Market とは、東京証券取引所が 2009 年に開設・運営している株式市場の 1 つです。誰でも参加できる市場ではなく、豊富な投資経験や知識を持つプロの投資家(特定投資家)に限定されています。上場企業数自体は 45 社( 2021 年 3 月現在)と他の市場よりも少ないものの、新規上場企業数は増加しており、今後さらに大きくなっていくことが予想されます。
TOKYO PRO Marketと他の市場との違い
TOKYO PRO Market には、参加対象がプロの投資家に限られている点以外にも、他の市場との違いがあります。
例えば、 TOKYO PRO Market には、株主数や利益に関して数値基準がありません。また、監査証明も 1 年間で十分であり、 四半期開示や内部統制報告書の提出は任意となっているなど、他の市場にはない柔軟な上場制度を備えています。株主数に関しては数値基準がないため、ある株主が株式を 99% 保有した状態でも上場可能です。支配権を維持した状態での上場ができる点も大きな違いだと言えます。
その他の大きな違いとしては、専門家集団による手厚いサポートが挙げられます。 TOKYO PRO Market では、「 J-Adviser 」と呼ばれる東京証券取引所から認証を受けたアドバイザーによるアドバイスを受けることが可能です。 J-Adviser は、上場を希望する企業の審査を実施するほか、情報開示やファイナンスに関する各種手続きなども行います。
TOKYO PRO Marketが注目される理由
TOKYO PRO Market が注目される背景にあるのが、 2022 年春をめどに行われる東京証券取引所と一般市場の再編です。この再編後の上場先候補として TOKYO PRO Market に注目する企業は少なくありません。
東京証券取引所ではこれまで、 4 つの上場区分が適用されていましたが、再編後は「プライム市場」、「スタンダード市場」、「グロース市場」の 3 分類となります。すでに上場している企業に関しては、 3 つの市場区分のうち、どの区分の上場維持基準に合致しているか 2021 年 6 月末までに確認し、その後、 2021 年 9 月 ~ 12 月に上場市場を選択しなければなりません。
なお、この再編により、上場基準における流通株式の定義が見直されます。今までは企業間の持ち合い株や政策保有株式が 10% 未満の場合は流通株式としてカウントされていました。しかし、再編後は非流通株式扱いとなります。そのため、政策保有株式やグループ内での保有が多い企業の場合、現状の株主構成では再編後の上場基準に満たない可能性があります。
以上のような点から、TOKYO PRO Marketは2022 年春をめどに行われる東京証券取引所と一般市場の再編を背景に、かかる期待が大きくなっていると考えられます。
市場環境を踏まえた TOKYO PRO Market を活用する IPO 戦略
ここでは、市場環境を踏まえてTOKYO PRO Marketをどのように活用するのかについて解説します。
市場再編がIPO戦略に与える影響
今後、IPOを検討している方が市場再編後に注意しなければならないのが、上場基準と上場廃止基準が同じハードルになることです。例えば、上場基準ぎりぎりの時価総額で上場した会社が、上場直後に株価の低下によって時価総額が基準を下回ってしまうと、すぐに市場変更もしくは上場廃止を迫られることになります。そのため、今後上場を検討する場合、時価総額が十分であるかどうかを入念に検討する必要があります。
一方で、 TOKYO PRO Marketは、上場基準が比較的間口が広いため、上場を検討している企業にとっては選択肢の 1 つとなりえます。
TOKYO PRO Market を活用する IPO 戦略
TOKYO PRO Market を活用した IPO 戦略にはどのようなものがあるのか解説します。
IPO 戦略①:優秀な人材の確保
まず、 TOKYO PRO Market を利用すれば、優秀な人材の確保が期待できます。企業が上場する大きなメリットの 1 つに、優秀な人材の確保や従業員の士気向上、取引先からの信頼の向上、企業の信用度の向上などがあげられます。TOKYO PRO Market は、他市場に比べて審査期間が短く、上場基準や開示制度も自由度が高いといった特徴を有しています。そのため、少ないリソース・短い期間で上場によるメリットを享受できる可能性があります。
IPO 戦略②:他市場へのステップアップ
また、 TOKYO PRO Market を他市場へのステップアップとして活用することも可能です。昨今の新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、上場申請を取り下げる会社は累計約 20 社( 2020 年 4 月末時点)と少なくありません。株式の売出しや公募といった株主からの資金調達に関しては、株価が下落している場合効果が半減するため、上場を控える企業が増える傾向にあります。
一方で、 TOKYO PRO Market へ上場すれば、上場企業としてのメリットを享受しながら成長に加速をつけられるだけでなく、株式市況を踏まえたうえで「グロース市場」といった一般市場へ市場変更するといった活用ができます。
IPO 戦略③:支配権の維持
そのほかにも、支配権を維持するために TOKYO PRO Market を活用することもできます。東京証券取引所の再編後は、株主数に関しては以下のような上場基準が設けられます。
・ プライム市場 : 800 人以上
・ スタンダード市場 : 400 人以上
・ グロース市場 : 150 人以上
上記市場への上場を目指すとなると支配権の維持は難しくなります。一方で、 TOKYO PRO Marketであれば、株主が 99% 保有したままでも上場できるため、議決権が希薄化することなく上場に伴うメリットを享受することができます。
まとめ:上場先としての TOKYO PRO Market
TOKYO PRO Market は、東証再編後における上場先候補となる市場です。また、優秀な人材の確保し取引先からの信頼性向上のため、 MBO する企業の上場市場として、他市場へのステップアップのためなど、これから上場を検討される企業だけでなく、既に上場をしている企業にとってもメリットがある上場先だといえます。
一方で、上場基準が他の市場と比較して緩いとはいっても、 IPO には「事業計画の策定」や「資本政策の検討」、「管理体制の準備・構築」、「プロジェクト進行」など、多くの検討課題があります。そのため、これらの課題を解決できるかどうかが上場するうえでは大きなポイントとなります。
きらぼしコンサルティングでは、企業が抱える課題に対して、アライアンスパートナーとの連携により、企業ごとにカスタマイズした上場プランの検討・実行のサポートができます。また、 IPO はゴールではなくスタートであり、「なぜ、 IPO が必要か」、経営者の理念・志が反映された明確なストーリーが重要と考えています。
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ここでは、 TOKYO PRO Market とはどのようなものなのか、他の市場とは何が違うのか、その概要について解説します。また、注目を集める背景についても紹介します。