業務の世代交代のきっかけに。
強み・弱みも把握し、目標がブレない会社へ。
クリステル工業株式会社
(左)総務経理部係長・東海林 里菜様、(右)代表取締役・吉岡 諒伍様
1941年にモルタル防水の専門企業として創業以来、多数のビル・マンションの施工を手がけてきたクリステル工業株式会社。「既存の建物を永く使いたい」という市場ニーズに応え、防水工事から大規模修繕まで、培ってきた技術力を幅広く提供しています。
長く経営計画などを明文化してこなかったという同社が、2023年に中期事業計画を、2024年4月には中期経営計画を策定しました。そこには現場の世代交代や、いずれ訪れる事業承継に対する備えがあったといいます。代表取締役の吉岡諒伍様と、長女で総務経理部係長の東海林里菜様に語っていただきました。
中期事業計画で世代交代のスケジュールを見える化
中期経営計画書は社内外に示せる行動目標として
−−中期事業計画書の後、あらためて中期経営計画書も策定されたのはどうしてですか。
吉岡社長:中期事業計画書は私の中で「世代交代」というテーマが大きかった。次は応用編として、今後3年間で会社はなにを目指すのか、社内外に具体的に示せるものをつくろうと思いました。
東海林係長:中期経営計画書では売上などの定量目標のほかに、定性目標(行動目標)を打ち出しました。人事労務・経営基本・販売管理・施工管理・財務管理の5つの分野に分けてKPIを設定しています。例えば人事労務であれば「社員満足」の高い会社を目指して、社員アンケートの評価点数を毎年1点以上改善すると決めました。
社員にも理解してもらいやすいように、伝えやすさや浸透しやすさを考えて言葉一つひとつにこだわりました。しっくりする表現がなかなか見つからなくて、面談で適切な言葉を一緒に探しましたね。
−−社員アンケートも初めての試みだったそうですね。
東海林係長:興味はあったものの、今までは余計な意見が出たらどうしようとかマイナスのイメージでした。今回ご提案いただいてようやく踏み込むことができ、むしろ本音を聞き出して課題を改善していこうと前向きになれました。社員も第三者が入ったことで本音を書きやすかったのではないでしょうか。
−−社内の連携などに辛口の回答もありました。
吉岡社長:会社への想いがあるから書いてくれたのだろうとプラスに考えています。確かに、アンケートで指摘されたように圧倒的にコミュニケーションが足りていない。やはり現場に出てしまうと業務以外のことに時間をとるのは難しいのが現状です。でもこれからは幹部会議で内容を共有しながら課題に取り組んでいきますよ。
みんなで向かっていく目標や指針ができた
−−2つの計画を策定して良かったことはなんですか。
吉岡社長:私の若い頃は気合と根性で手に職をつけられればよかった時代でしたが、今は安定感だったり働きやすさだったり環境が重視される時代です。今の社会に適応した経営や世代交代の必要性を実感しました。それに会社の計画や戦略を明文化したことで私と幹部の認識に差異がなくなります。私の発言にもブレがなくなりますしね。もっと早くやるべきだったなと思います。ご提案いただいて、良いきっかけになりました。
東海林係長:会社のみんなで向かっていく目標や指針ができました。これをベースに必要に応じて見直していけばいいというのはありがたいですね。
私個人では経理担当を引き継いだばかりで決算書の読み方もわからない時期でしたが、5年分の決算をまとめていただいたり、わかりやすく解説していただいて、すごく助かりました。事業承継についても今回のコンサルティングを通じて背中を押していただきました。
業務との並行はプロの支援があればこそ
――きらぼしコンサルティングのサポートはいかがでしたか。
吉岡社長:経営計画や戦略を練るって大切だと思いながらも、私たちのような中小企業は日々の業務に追われて後回しになってしまいます。よそのコンサルに提案されても数字を見せる抵抗感がありますし、「忙しいから無理」ってなると思うんですよ。でも融資してくれた取引銀行を介した提案なら間違いはないだろうという絶対的な安心感があります。
実際にやって良かったし、担当者の人柄も温かい。そういう意味では料金だって決して高いとは思わないです。
東海林係長:それにきらぼしコンサルティングの場合、課題ごとに各分野の専門家からアドバイスをいただけます。これは本当にありがたかったです。なにより私たち親子のとりとめない会話を的確にわかりやすくまとめてくださった担当者の方には感謝しています。
日々の業務と並行しながら自力で経営計画をつくるのは至難の業。言葉の選び方なども含めて、プロに支援していただいて良かったと思いますね。
吉岡社長:コロナ禍や震災で痛感したように、安全・安心な住宅は社会にとっても必要不可欠です。オフィスビルも最近は「100年もつ」と言いはじめました。それを実現するのが私たちの仕事です。モチベーションを高く持ち、利益を厚くして社員に還元したい。今後も会社の改善に向けてお知恵があれば授けていただきたいです。
担当コンサルタント(飯塚)より
事業計画書・経営計画書などの資料があると金融機関に対しても説得力のある説明が可能になり、社長に対する信用も厚くなります。今後は社内において、特に幹部層に対して計画書の内容の理解を深め、ひとつずつ計画を実行していくことが社員の信頼を得るうえでも大切になってくるかと思います。また今回のように事業承継において“株式承継”ではなく“業務の承継”に焦点を当てることも可能ですのでぜひご相談ください。
クリステル工業株式会社
−−中期事業計画の策定は2022年9月に着手されました。なにかきっかけがあったのでしょうか。
吉岡社長:当社の2代目だった父は48歳で急逝。その跡を継いだおじは50歳、先代社長の母は66歳で他界しました。みんな短命でしたから、私も還暦を迎えてしみじみと会社の今後を考えるようになりました。社内の高齢化も進んでいます。そんな折に融資や補助金の申請などでお世話になっているきらぼし銀行から提案があり、「やってみようか」とお受けしました。
−−中期事業計画書では世代交代について具体的な業務ごとに引継計画を策定。さらに財務内容から業務フロー、ビジネスモデルなどを約半年かけて整理しています。初めての作業だったそうですが、なにが一番大変でしたか。
吉岡社長:大変だと思ったことはなにもないですね。担当の飯塚さんが上手にヒアリングして私の考えが至らなかったところをカバーしながら整理してくれました。
世代交代については、業務ごとに時期を明確にして引き継ぐ人を指名しました。いま社内にいる若い人たちはみんな優秀だと思っていて、「なにがなんでも娘に継がせるんだ」というよりも共同経営みたいな色を濃くして、みんなの会社として継続していければいいんじゃないかという空気を出したつもりです。
東海林係長:私たちふたりで話している方が大変ですね。社長と社員というより親子として話してしまい、世代のギャップもあってつい口論になることが多いんです。プロのアドバイスをいただきながら落ち着いて向き合う時間をつくれたのは大きかったですね。
当社のSWOT分析(自社の外部環境と内部環境を、強み・弱み・機会・脅威の面から分析すること)もできました。何年も放置していた悩みがリスト化され、ようやく解決に向けて具体的に動き出せる状態になりました。
吉岡社長:私だけだったら売上と利益にしか目が向かなかったと思います。今の社会環境も視野に入れながら、褌を締め直していくよという気概が伝わる計画書になりましたね。